「…とりあえず今日は、夏樹もいないし。

俺も調べたいことがあるから…一旦、やめよっか。


また夕食で」



「了解。じゃあね」



「ばいばーい」





冬斗がいなくなった春乃の部屋で、私と春乃はほぼ同時にため息をつく。




「…夏樹ってさー、よく考えてみると、あたし…よく分からないかもー…」



「私もそう思う…

なんていうのかな…壁がある感じがするんだよね」



「そう、それ!まさにー!

…けど…この1年間で…あたし結局、夏樹のことなんにも知れてなかったんだなぁ」




しょぼん、という効果音が聞こえそうなほど落ち込む春乃に「そんなことないよ」と言う。




「…夏樹が作っている壁なんて、壊しちゃったらいいよ!

…春乃、そうゆうの得意でしょ?」




「と、得意ってなによー!まるであたしが…なんか、人に馴れ馴れしいとかみたいじゃん!」



「いや、間違いではないよね。すぐ打ち解けるっていうか…馴れ馴れしいっていうか…」



「ひどいー!」



けど…なんだかんだ、春乃を私は羨ましいな、って思うよ。

私、人見知りな方だったし…

…なんていうか、いつも…周りの人に怯えてたかも。



打ち解けたら一瞬なんだけどね。

だから今までの学校生活も、最初の1週間は1人でもあとは全然楽しかった。




「…そういえば、みんな…元気かな…」




高1の時の友達…次々と顔が浮かんでは消える。

私は…転校したってことになってるはず。


…せめてみんなに、バイバイ、とか言いたかったかも。