「ま、なんとかなるっしょー。

あ、そういえば秋奈の着物、少し薄くなってる…気温が変わらないのに夏仕様にしたんだ、でも…

…うん、こっちの方が身軽そうだし、綺麗だよ」




…なんなんですかねこれは。


スポーツマンじゃなくって、夏に暑い暑い言って冷房が効いてる部屋でぐーたらしてる人だよ絶対。

スポーツマンとは言い難い夏樹は、ここ1週間、毎日こんな感じ。


…まあ、ここ1、2週間ほどは私が1人で着付けをやってみてるんだ。

着物選びも帯選びも。だから、褒めてもらって悪い気はしないんだけどさ…いや、実際結構嬉しかったりするんだけどさあ!


前までは下着とか着物の下に着るものだけを着て、あとは他に人に着せてもらってたから。
なんとか覚えたって感じだし、今もちょっとゆる〜って感じなんだけどね。



…ま、それはともかく!!

ここ天界にいる期間が春乃よりは長いらしいし…多分、"夏"という季節が今どんな状況なのか1番知ってるのは、紛れもなく夏樹のはず。



言動や雰囲気からして、多分1番ここに長いこといるのは冬斗だけど…

やっぱり自分が司る季節だし。






「あ、俺ちょっと用事思い出した!

んじゃーねー!」




「あ、ちょっと夏樹ー!」




おもむろに立ち上がった夏樹がさっと背を向け、ここ、春乃の部屋から出て行こうとする。

…毎日、こんな感じ。




前は…いくら気だるげでも、ずっといたのに。

この1週間は、すぐ帰っちゃうんだよね…




「…いいよ、春乃。
放っておいて」



「うぅ、でも夏樹ぃ…」



「…きっと夏樹も分かってるはずだからね。


逃げている自分が、すっごくカッコ悪いってことぐらいは」




夏樹が襖を閉じたのとほぼ同時に発せられた冬斗の言葉。

夏樹に…聞こえてたのかな。



でも…夏樹が逃げてる、って。

そんな風に見えないけど。



確かに変な言い訳使ってサボろうとする夏樹だけど、なぜか…逃げてる、みたいな感じはしない。

でも…冬斗にはもしかしたら、思うところはあるのかも。




「けど…やっぱり変、だよね…」



「秋奈もそう思うー!?

夏樹、絶対変だよ!」