暑い夏も、
汗にじむ夏も、
蚊に刺された夏も、
冷たいもの食べて頭が痛くなる夏も、


俺は全部
嫌いだった。






夏と言えば、
花火、お祭り、海。




楽しいイベント真っ盛りに思える夏だけどさ。






ヒトは楽しいことが起きているとき、
なにかしら苦しいものが迫っていることに気付いていない。



ヒトは自分が笑っているとき、
誰かが自分のせいで泣いているのを知らない。









蝶の羽が1回羽ばたくだけで
どこかの国でトルネードが起きるなら。




風が少し吹くだけで
桶屋がもうかるのなら。







夏を楽しんで笑うやつがいるだけで、

どこかで自分が救われるために
手を赤く染めた者がいることぐらいなら。




別に、なんとでもないだろ?










ただ、陽の下で揺らめく陽炎が
俺に幻を見せてから。



たとえ俺が狂ってしまったとしても








その時はまた、陽炎が








俺の本性を周りから隠すために
















何度も、何度でも…――――――