「は……はいいぃ!」



その声に怯えてしまった私は、あとはされるがまま。



腕を引っ張られて立ち上がって、どこかに連れていかれる…



絶対に顔、上げられない。



私の腕を掴んで引っ張るこの力強さから…普通の男の人じゃない。



マッチョとか?でもそれにしてはうつむいても見える腕が細い…



顔を見たいけど、見たら絶対に睨まれることは間違いない。



それにしても…一体どこに行くんだろう。



…この金にならない女をどうするか、みたいな会議だったら…



考えるだけで恐ろしい。無駄な抵抗はやめよう。





しばらく歩くと、私の腕を引っ張ってる人が急に止まった。




視界の端に映るのは…鮮やかな模様が描かれている、襖。




この模様は…また桜だ。



すごい、今が春だからってそこらじゅう桜ばっかり。





…なんて趣味のいい誘拐犯なの。