「はあ…やって、くれたな、おぬし…

だが、まだわっちは死んでなど…」





…分かってる、そんなこと。





「…わっちはな、一度受けた術を二度と受けぬ。

札が記憶してるのだ…

もうお前が攻撃することなど…」



「…できないとでも、思った?」




卑弥呼の後ろで2つの影がゆらぎ、一気に襲い掛かるのが…私の目に映る。



それを察知して振り返り、お札で防ぐ卑弥呼。




でも…


まだ、
私に”背中”を
見せちゃいけなかったと思う。




50m走は9秒前半。
速くも遅くもないような中途半端な速さだけど、私は一気に走り出した。



最初から、狙いはコレだった。





「!なっ……!!」





卑弥呼の背中に襲い掛かる直前、なぜか冬斗と目がまたあった。





…そんな、悲しそうな目をしないで。
私だって怖いけど、

…やって、みせるから。






私は手に持っていた短刀を、
彼女の背中に…思い切り、振り下ろした。


不思議とその時私は、
目を閉じることなく…

血の色に染まる卑弥呼を、ただただ見ていた。