私の頭は冴えに冴えてる。珍しいくらいに。




けど…だからこそ、不安なんだよね。
予想がはずれてたらどうしようって。
春乃の力を無駄にしたらどうしようって。


でも、
また春乃が進めるように。

…私も、進めるように。




決めた。




卑弥呼に、
一泡ふかせてやる…って、ね!!




脳裏に流れる、初めて術を使ったときの記憶。

気付けば、手を前にだしていたんだ。



走りながら右手を前にだし、左手に握っていた2枚のお札と合わせる。



そして…
体の奥底にたまっている熱さを一気に押し出すような感触で、力を入れた…






『おねがい』





心の中でそうつぶやくと、体の中の血が一気に熱くなったような感じがして、ちょっとくらくらする。

足をスピードアップさせて、卑弥呼の背中へと近づいていく。



春乃、待ってて。
私、頑張って見せるから。


夏樹、ありがとう。
私の思いを尊重してくれて。






冬斗、ごめん。
心配して、くれたのに。







「いっっっけえええええええ!!!!」






手から、踊るように舞うように、赤い赤い…光でできたもみじが湧き出る。

それはすごい速さで卑弥呼の背中へ向かう。



…そして、そのあとを追うように。

淡い桜色の光と、もみじの赤とは違う、燃えるような炎の赤と、触れたものすべてを切り裂いてしまうような風が向かっていく。



4つの力が交わったとき、

ちょうど、卑弥呼が後ろを向いて。


「なっ…!!」




卑弥呼は急いでお札で防ぐけど…ほぼ、間に合わない。




お札はほぼ力をなさなくって、気付いた時には…卑弥呼の着物も肌も、ボロボロになっていた。