で、でも!



私の場合、今じゃ天涯孤独の身。



保険金はあるけど…身代金も取ることはできない、はず!



良かった…あとは、誘拐犯さんが私の価値の低さに気づいてもらえれば…



…って、もしかしたら…



私がお金にならないと知った誘拐犯は…勢い余って……





「起きた?」





私が頭を抱えてる横で、襖が急に開き、誰かが入ってきた…!




…ゆ、誘拐犯だ…



間違いないよ…どんな技術かは分からないけど、誘拐されたのにはちがいない!




目を、目を合わせちゃいけない…



確か獰猛な相手と目を合わせると危ないって…あれ、それってクマ?




いやいや、誘拐犯はクマ以上に怖い…とりあえず、絶対に目は合わせない!




心の中で決心して、布団を見つめたまま口を開く。





「あ、あのですね!

私はお金にはなりません!

安心してください…一切このことは誰にも言わないので!!」




「…はい?」




…失敗だ。



顔から血の気がさーっと引くのが、自分でも分かってしまう。




ぜ、絶対怒ってる…!




『なに言ってんのコイツ?』



みたいな雰囲気が伝わってくるもん…!



で、でも…まだ負けない!




「で、ですから!

お願いだから私を殺さないでください!誘拐犯さん!」





ぎゅっと思わず目を閉じる。



呆れたような…ため息の音。近付く足音。



そして……突然、ぐいっと腕を引っ張られる。




え!?ちょ、ちょっと…!?な、なにこれ!?




足がもつれて、なかなか立てないし!




「来て。

みんな、君を待ってる」