「春乃は!どこにいるの!?」




思わず叫んだ私に、卑弥呼はにやり、と笑う。


その笑顔は美しいはずなのに、なぜか寒気がするような笑顔だった。




「…だから言ったであろう。

もう、わっちの手の中じゃ、と」




突然、どん、となにかが倒れる音がした。


それは…卑弥呼の隣で。



卑弥呼と同じような着物を着た青い髪の少女が…いや。

青と桃色を基調としていたはずの着物の一部が真っ赤に染まった着物を着た青い髪の少女が、倒れている。




「は…る、の……?」



「…春の神、佐保姫。

春の玉。

そして…


春の生神、春乃」




そうだ。

卑弥呼は、もう…




「3つの春の力を抑え…

わっちは完全な"春の神"になった」




そう言うと、卑弥呼は手を大きく振った。


すると大広間に、無数の"何か"がどんどん飛んでゆく。



細い紙切れのようなそれは…

壁に貼られた瞬間、私達に理解できた。




「"お札"……?」





大広間の壁にぐるっと一周するように貼られたのは、
短冊状の…読めない昔の文字で書かれた、お札。



何百枚ものそれが貼られた刹那…空気が、変わった。



私の真後ろにあったはずの大広間への入り口がバタン!と重厚な木製の扉で勢い良くとじられ、
急に大広間は薄暗くなる。


そして、卑弥呼が立ち上がる。




「さぁて、始めようか」




ピッ、と手にお札を持った卑弥呼は、勢い良くそれを私達に向かって飛ばした。



それは減速するどころか速さを増し、私達3人に向かっていく。




「とりあえず、俺がもらっておくよっとぉ!」