けど、それも一瞬で。


薙刀でその炎さえも切ってしまった彼は、ほぼ無傷のようだった。





「うっわ、ご厄介なこって!
……でもさ、」



妖艶とも言える笑みを浮かべる夏樹は、再び炎を手から出した。




「…"刃には刃を"じゃね?」



真っ赤な炎が再び彼を包む。



けど、無駄。
だって彼は薙刀で…



予想通り、薙刀で炎は切り開かれる。



…いや、1つ予想外だった。



いつに間にか…冬斗が、横から消えていた。

そして…薙刀を振り下ろした直後の彼の目の前に、立っている。



冬斗の周りには炎が燃え盛っている…けど、熱いなんて全く思っていないみたい。


冬斗を目でとらえても無表情な彼は、冬斗が振り上げた日本刀をただただみていた。




「…手加減してるね」



冬斗のつぶやきが、なぜか私の耳に届く。


手加減…?



そう思っている間に…冬斗の日本刀は振り下ろされた。



彼の薙刀を折り、続けて…彼の体に、一筋大きな傷をつけた。




炎の赤とは違う、深紅の紅が、屋敷の入り口に飛び散った。


嫌なことを思い出して、目をそらそうと首を横に向けた時。




視界の端にうつったのは、

彼が、微笑んだ顔だった。