生神さまっ!

いなくなってしまった。






唇にそっと触れる。

まだ残る君の体温を、あたしはいつか忘れてしまうのだろうか。



それが怖くて、ただただ泣いた。



桜の木の幹まで移動して、座り込んで、すがりついて。






「…お久しぶりです」





そんな声が聞こえるまで、
あたしは泣いていた。



パッと顔を上げると、そこには…


深い深い青色の髪をあたしと同じ肩までの長さまで伸ばしている、
とても綺麗な女性だった。



白い肌に、青と桃色が綺麗にグラデーションのように交わっている着物が映えている。


彼女の目は青く、今の空のように澄み切っていた。





「…春乃。

これであなたも、生神になることができましたね」




「いき…がみ……?」




聞いたことのない単語に、首を捻る。
女の人はそんなあたしを置いて、にこっと笑う。




「…お久しぶりです、我が子よ。


あなたは今日から、ヒトではない、



神として生きていきます」




「え……?」



なんのドッキリだろう、と思った。


けど、



春樹の言葉が頭にちらつく。



春樹に何かを教えた、女の人というのは…




「あなたの…名前は……?」




「…そりゃあ、忘れていますよね」




目の前の女の人はふっと笑うと、言った。




「私は"佐保姫"…春を統べる神をしています」