生神さまっ!

彼の、透けてる手があたしのほおに伸び、そっと涙を拭う。


もう、体温を感じない。
冷たいわけじゃない。
けど、暖かくもない。


ただ、優しかった。




「…僕ね、春乃が読んでたあの漫画…読んでるうちに、やっと主人公の彼氏の気持ちが分かったよ」




拭っても拭っても流れるあたしの涙を見て、彼は笑う。


あたしも拭おうと手を伸ばすけど、なぜか届かない。



あなたに、触れたいのに。


あなたに、触れられない。




「…笑って、春乃」




春樹の言葉に、あたしは…



ただ、大粒の涙を流しながら、笑った。




春樹も泣いて、笑った。



そして、景色が真っ暗になる。



…やっと、感じることができた。




唇から伝わるあなたの体温。


けど、それも薄れてゆく。




気付けば、目を開けた時には。




大きな大きな桜の木があるだけで、

春樹の姿はなかった。