生神さまっ!

なんで、と目を向ける。


けど彼は、あたしが好きな笑顔を浮かべて、ゆっくり首を横に振る。
分かってるでしょ、そう言いたげな瞳で。
声にならない声が、あたしの口から出て行く。
涙をこらえようと、唇を必死に噛んで…その時、



世界は暗くなった。




「んっ…あ、ん……」




濃厚な、キス。


今までキスしたことがないわけではなかったけれど、
ただ、今日の、今のキスは。




「…はっ……」




いつもより、深くって。
いつもより、優しかった。




「…女の人が来たって、言ったでしょ」



「うん…」



ぎゅっと抱きしめられながら話しているせいで、彼の顔は見えなかった。

けど、なんとなく…


悲しそうに笑っているんだろうな、ということは分かった。




「…春乃、
僕は君に最初から惹かれてたんだよ」



「う、ん…?」



急に話が変わって、ちょっと混乱してしまう。
けど春樹は、知ってか知らずか…いや、多分知ってて、話を続ける。




「不思議な魅力があったんだよ、春乃には。

…まだ僕は15歳だけど、
運命を信じたぐらい…はは、カッコ悪いね、僕」



「かっこ、悪くなんか…ない」



だって、あたしも信じてた。
春樹は運命の相手なんだ、って。


今…春樹の気持ちが知れた。
けど、遅すぎた。


彼の気持ちを知るには、あたしは遅すぎたのだ。



また再び流れ出す涙をふくこともできず、ただ彼の肩に顔を寄せる。




「…運命の相手っていうのは、本当だったらしいんだよ」



「え…?」



「春乃、
僕の代わりに、生きて。

僕ができなかったこと、やって。


僕が見ることができなかった本当の桜を、



君が取り戻して、見て」





なにを言ってるのか、意味が分からなかった。


馬鹿なあたしには、彼の言葉が理解できない。




けど、ただ1つ、分かったことがあった。





それは、






「…さよなら、しようか」






あたし達はもう、
会えないということ。