生神さまっ!

嫌だ。


嫌だ、嫌だ。


お願い。



それだけは、やめて。




桜の枝をぎゅっと左手に握り、あたしは一歩一歩踏み出す。

どんどん、窓が近づいて行く。



空は、暗雲が渦巻き、
春の天気とは思えない雰囲気だった。




窓が近づいて、目の前に風景が見えた時……



嗚呼、信じたくないことが起こったのだと、



察してしまった。





「救急急いで!!!」



…やめて、



「マッサージ!今やってる!?」



…やめて、



「早く輸血回して!血吐いてる!」



…お願い、



「体温低下!!現在34.9度!」



…誰か、



「先生!手術の準備が整いました!」



やめてよ、



「先生!心拍数急激に下がっています!!」



ねえ、



「先生!」



ねえ……!



「先生!!」




………やめ、て。





_ピーーーーーーーーーーーー





嫌な電子音が響いた後、先生と呼ばれる春樹の主治医である50代半ばのおじさんが、春樹の顔を覗き込んで何かをしているのが分かった。







言わないで、


お願い、


言わないで。




スー…と、静かに
あたしのほおを、涙が通ってゆく。




見えるのは、春樹の横顔。

あたしに笑いかけてくれた、あの顔。





「……3月27日、午後1時56分32秒。

死亡を、確認しました」



…言って、しまった。









あたしの手から、





するり、と。








桜の枝が、落ちていった。