「はあ…はあ…はあ……」




高天原の夜は、昼と変わらぬ温度。




「はあ、はあ……くっ!」




走りすぎて足が麻痺し、石に軽くつまづいただけで思いっきり地面に倒れてしまった。




「っ…!く、あ…!」




身体中の機能が止まってしまっても良い、と再び立ち上がる。




「は……か、はっ…はあ…はあ…」




…やっぱり、それはダメだ。




「…ど、こに…いる、の……!」




お願いだから、他の機能は全て無くなってしまっても、聴覚だけは生きていて。




「っ、!」




立ち上がったと思われた身体は立ち上がっておらず、また倒れる。




「はあ、はあ、はあ…っ、ねえ…」




君は、どこにいるの。




『…春乃、そんな走るなよ、危ないから』




「!春樹!!」




顔を上げても、君はいない。




ゆらゆらと世界は揺れ、闇色に染まっている空より深い黒に視界を染めようとする。




「…おね、がい……」




たとえ意識が無くなったとしても、聴覚だけは。




『春乃』




だって




『僕は、死んだんだよ』




君の声が、聞きたいから。