その日の夜。

俺は、子どもたちをお義母さんに預けて

お義父さんと飲んでいた。

「幸焼君。君が結婚の挨拶をしにきてくれた時があっただろ。」

不意にお義父さんが話し始めた。

「あの時はなかなか、OKをだしてもらえないで参りましたね。」

「ハハッ。そうか。私も君の事が気に入らなくてしていたわけでは無くてね。
ただ。君が一度や二度認めなかったくらいで諦めるようなら、娘は任せれないと思ったんだ。けど、一度や二度どころか1ヵ月も
毎日挨拶に来ただろ。それで、段々と意地を張ってね、少し楽しんでたところもあったよ。」

「悪趣味です。」

「我ながらそう思うよ。けど、娘とその事で喧嘩をして君と駆け落ちをすると、言い始めてね。次の日君にその事を言ってたところを見てしまってね。」

「そしたら、君は信生と一緒に幸せになりたいのはもちろんだけど、私達信生の親とも幸せを分かち合いたいと言った。
あの時は涙が止まらなかったね。」

「だから次の日急に認めるって言ったんですね。」

「そうだ。信生の隣にいてくれて、本当にありがとう」

声をつまらせながらも必死に言葉を紡ぐお義父さんを見てると、たまらなくなった。

覚悟をしていたことなのに。

これから、俺一人で子供二人を育てなくては、ならないのかとか、今はそんな事考えれなかった。

信生を失ったショック。それだけだった。

「幸焼君は、これからどうするんだ。」

「そうですねぇ。わかりません。子供のこともあるし」

「仕事だって大変だろう。君さえ良ければ、身の回りのことは私達が引き受けるが
どうだ」

「えぇ、助かります。俺一人では何もできないから。」

そうだ

俺一人ではなにもできないんだ。

信生がいたから、おれはやってこれたのに

その日は、夜明けまで飲み明かし

フラフラでお義父さんと信生の実家に帰った。