雪見月

戻ると彼は申し訳なさそうに肩を借りた。


肩身を狭くして、相変わらず無表情の顔を少し俯かせている。


私の肩幅では彼の腕の方が断然長い。


窮屈だろうに、はみ出た手先を持て余しても、何も言わないでそのままにしてくれていた。


自分の身長と肩幅が何だか憎らしかったのは秘密。


途中、分かれ道の度に説明してもらいながら、地図をしっかり頭に叩き込む。


緊張は次第にほぐれて会話が弾んだ。


話題提供は彼がしてくれた。


どこかたどたどしいことに気が付いても、私は話が上手くない。


口下手なのは自覚していたし、気を使ってくれたのは分かったから、私は話を合わせて笑っていた。


少なくとも多分、嫌われてはいない。


これは私、彼の間合いに足をかけたか。


……入れたなら幸せだけど、でも今はどうでもいいことだ。


邪念を振り払う。


私の片思いを結ばせたいから、などという下衆な理由で彼を助けたい訳じゃない。


彼が困っているのに、少々無理をしてでも手を貸さない選択肢なんて、最初からこの手には残されていないのだ。