雪見月

油断した。


持っていた紙が飛ばされてすぐ下に落下。


カップケーキの方ではなく、赤地に黄色い文字が目立つ方だ。


急いで脚立を降りると、紙がない。


あれ? おかしいな、確かここにあったはず。


きょろきょろと辺りを見渡せば。


「あの」

「っ」


控えめに声がかけられた。


……忘れもしない、これは彼女の、




顔を上げる。


「落とされましたよ」


やはり彼女だ。


覚えている顔から少し大人びた少女がそこに立っていた。


背も伸びたかもしれない。


「ありがとう、ございます」


受け取った紙を握る手に、密かに力がこもる。


彼女の視線が、くしゃり、と角が歪んだそれに驚いたように、指先をたどって。