雪見月

しばらく通ったけど会えないまま、春休みに入った。


俺は、成績を心配した母親により、問答無用で毎日塾に行かされ。


さすがに思うところはあったのか、

送迎をしてくれたので(それだけ朝早くて夜遅い時間だった)、


すっかりあの場所には行けなくなった。




季節は一つ回り、花が咲き乱れる鮮やかな日々がやって来た。


糊が効いた真新しい服を着て歩いている、期待に頬を染めた人々をよく見る。


中高生にはおめでとうとお祝いを、

大学生にはどこか焦燥感を、

社会人には良かったですねと祝福を、覚える。


傍らで、最近、あのコンビニのバイトを始めた。


他との掛け持ちはきついけど、両方何とかやっている。


忍耐力をつけるため、なんて、笑える理由でもいいだろ。


俺にとっては早急に上げたいステータスなんだから。


桜が咲こうが咲くまいが、なんて悠長に構えるつもりはさらさらない。


必死だ。


……俺の桜は時期外れなのだろうか。


そろそろ五月に入るのに、


まだ、

咲かない。