雪見月

珍しいね、と聞かれる好奇の目を全て、


「仲の良い従姉妹がもうすぐ誕生日だから」なんて真っ赤な嘘でかわして。


昼休みをまるまるかけてやっと聞き出した店は、駅にあるという。


その日の帰り、掃除当番じゃなかった俺は、HRが終わるなり、即校舎を飛び出した。


女子ばっかりの店内で悪目立ちしながら、女子ばりに延々悩んで買ったのは。


彼女に似合いそうな、細い金のチェーンに飾り二つと銀のクロスが付いた、豪奢なストラップだ。


飾りの色はピンクにした。


彼女には赤とかオレンジとかより、ピンクが似合うと思った。


形はたくさんあり過ぎて、流行りとか、どれがいいのかなんて分からなかったから。


俺が選んでも間違いないだろうクロスを、慎重に、無難に。


店員さんに「プレゼント用で」と告げ、

綺麗で可愛らしいラッピングをしてもらうと、微笑ましそうにされた。


……違います。彼女じゃないです。


いえ、とにこやかに訂正しつつ、乱雑な鞄の一番崩れなさそうなところに入れる。


粗雑には扱えない。


適当に教科書とノートを詰めて、置くときも投げるように置いていたが、そんなんじゃいけない。


なるべく平らな面が多くなるように並べて、一番上にそっと置く。



俺の鞄はその日から潰れなくなった。