名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

そうちゃんから突きつけられた関係性は、普段戒めみたいに自分で思うよりずっと、わたしを苦しめる。

切なく、なる。


『家隣なんだし、別に直接会って連絡すればいいんじゃないの』


それは、会わないときは連絡しなくていいということだった。

話さなくていいということだった。


……この、帰り道は。

そうちゃんが放課後一緒に帰ってくれるのは。


わたしたちが幼なじみだからだという、ことだった。


惰性と慣れと言いつけと、習慣じみた積み重ねと、残酷な優しさと。多分、少しの無関心。


そんなことは分かりきっているはずなのに、勝手に傷つく。


「…………佐藤くん」


息を吸って、強張る唇に強引に音をのせてそうちゃんを見つめた。


わたしが好きなオレンジ色の横顔は、いつものように振り返らない。


「あのさ」


ああ、駄目だ。声が震えた。


視界がにじんでいる。


きっと、泣きそうな顔をしてしまっているに違いない。


どもるような懇願に、一つまばたきをして、そうちゃんはゆっくりわたしを見た。


その顔に浮かんでいるだろう不思議そうな表情を見たくなくて、目を逸らす。


わたしが勝手に好きでいる。でも。


ねえ、そうちゃん。わたし、そうちゃんが好きなんだよ。


ずっとずっと、好きなんだよ。


お願いだから。頼むから。


どうかどうか、連絡しなくてもいいなんて言わないで。