名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

「…………」


くっそうこの思わせぶりな言い方!


ものすっごい思わせぶりだよそうちゃん!


「嫌だった?」


わたしの沈黙をどう捉えたのか、こちらを見ないままで、そうちゃんは短く聞いた。


伺うような響きではなかったけど、淡白さの向こうに配慮がにじんでいた。


何か予定あった? って聞くと気を遣わせると思ったのかな。そういうところも好きだ。


「ちょっと待って考えてる」

「嫌かどうかを?」

「嫌かどうかとかその他諸々とかを。だから待って」


焦って結論を出すとろくなことにならないんだ。

しっかり考えて、後悔しない選択をしたい。


だって、そうちゃんとのことだから。


「考えることか、それ」


文句を言いつつも、そうちゃんは黙って待っていてくれた。


よし、ちゃんと考えよう。


そうちゃんと出かけるのが嫌か。

嫌じゃない。嫌なわけない。


そうちゃんと出かけてわたしの身が保つか。

多分。おそらくは大丈夫だ。


そうちゃんと出かけて関係が悪化しないか。

これもきっと大丈夫だ。

だって、そうちゃんから言ってくれたんだから、わたしもそうちゃんも楽しめたらいいな、と思う。


この機会を逃して、わたしはそうちゃんと出かけられるか。


分からない。

だいぶ遠い未来になったら、一緒に遊ぼうって頑張れば言えるかもしれないけど……そのときそうちゃんがなんて答えるかは分からない。


今を逃してはいけないと思う。


……よし。