名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

そうちゃんは不機嫌に口を結んだ。


「……あ、そ」

「うん」


むすり、と顔を背けられる。


眉間にしわが寄っているけど、怖い顔のわりに、への字に結ばれた口元が優しかった。

怒ってはいないみたいだから、別にいいや。小さな沈黙が落ちる。


「……そういえば、お礼何がいい?」


唐突な話題転換は気にしないことにした。


「なんのお礼?」

「昨日手伝ってもらったから、そのお礼。なんかおごるのでいい?」

「うん」


遠慮はしない。


え、いいよいいよ、なんて言うほど可愛い性格をしていないのは、とっくに知られている。


ありがと、ともらっておくのが一番だ。


「ん。あ、それともどっか行く?」

「え?」

「飯とか食べに行く? 遊んでもいいけど」

「いや、ジュースとか安いのならともかく、そういうのでおごってもらうのはちょっと、なんていうか、もらいすぎっていうか」

「じゃあお礼はココアな。明日でいい?」

「うん」

「で、出かけるのはいつがいい?」

「えっと、待って予定見るから」


ん?

うん? あれ、ええと……?


思わずスマホを取り出してから気づいた。


なんで出かけることになってるの?


「えーと、佐藤くん」


そろりそろりと問いかける。


「何、佐藤さん」

「出かけるって誰とでしょうか」

「俺と、佐藤さん」


そうちゃんは至って普通に、わたしたちを順番に指し示した。


あれ?


「…………」


えーと。うーんと。


固まりつつも、なんとか頭を整理する。


「二人で?」


きっと違うよね、という意味を含めた前提確認に、そうちゃんはあっさり頷いた。


「二人で」


え、と。


「……友達は?」

「え、呼ばないけど」


……デートじゃんかあああ!


つまりそれってデートじゃんかああああ!!


駄目! 無理! 駄目!