名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

いくら幼なじみとはいえ、なんにも言葉にしなかったら、なんにも伝わらないに決まっている。


そうちゃんが鈍いってことではなくて、むしろ聡い方だと思う。


でも、ただ単に、何も言わないけど気づいて欲しいとか、分かって欲しいとか言うのは無謀だ。理想論だ。

言葉がなくたっておおよその雰囲気は伝わるかもしれないけど、明確なニュアンスの違いは伝わらない。


わたしはそうちゃんが好きなのだ。


まだ好きだって言えないけど、多分もうちょっと先まで言えそうにないけど、でもいつかはちゃんと好きだって言いたい。


本当は、遠回りして帰ろうって言いたい。

毎度最短距離の道を通っているけど、たまにはいつもの道じゃなくて、ほんの少しだけでいいから遠回りをしたい。そばにいたい。


今はまだ、一緒にいてくれるなら、話さなくてもいい。

長年抱き続けてきた、もしかしたらほんのちょっぴり持て余しているのかもしれないこの気持ちを、うまく言葉にできるまで、無言だって構わない。


実のところ、多分わたしは、そうちゃんのことが好きな気持ちを持て余しているんだと思う。

あまりに鮮烈で、当たり前で自然で、でもちゃんと好きだって明確な恋を、募らせ続けている。


それでもまだ、好きでいたい。

まだ、終わりにしたくない。


いつか、優しい風が吹くオレンジ色の帰り道で、できることならほんの少し遠回りをして、ゆっくりココアと炭酸飲料を飲みながら、軽口を交わして隣を歩きたい。


この初恋を大事にしたい。


だから、そうちゃんにわたしがそうちゃんのことが嫌いだなんて思われるくらいなら、ものすごく恥ずかしい方がずっとずっといい。