名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

お互い極力反対方向を向いているから、表情は見えない、というか見たらもっとひどいことになりそうで絶対見ないようにしているけど。


照れているのは確実で。

気恥ずかしいのも確実で。


「ばーかばーか、ほんとばか」

「ばーか、うっさい」

「わたしのせいじゃないし。くれたの佐藤くんだし……!」

「言うなあほ……!」

「あほじゃないから!」

「ココア飲んで火傷するとかあほだろ。絶対あほだろ」

「わああああ!? それ今言う!?」


この頃、どんどん戻ってるなあと思う。


たくさん話して。

ふざけて。

馬鹿やって。

距離が近くて。


昔のわたしたちの関係に戻ってきている。


楽しいし嬉しい。


「……でも」

「……なに」


怒られそうだけど、これだけは言っておこう。


軽口に本心を混ぜて、努めて冷静に言おうとして失敗した。


「い、やだったとかじゃないからね、嬉しかったんだからね」


嗄れた早口でなんとか言いきって、もう少しつけ足す。


「ほんとにほんとに嫌だったとかじゃないから。ほんとに。……それだけ」

「やっぱばかだろおまえ……!」


目を泳がせながら頑張ってみたら、やっぱり怒られた。


そうちゃんがまなじりを吊り上げる。


……だって、どうしても言っておきたかったんだよ。


照れてるだけだって、本当は嫌じゃないんだって、ちゃんと伝えないと不安じゃないか。


わたしが本気で嫌がってるなんて誤解されたら嫌だ。