もらったお菓子を食べながら、二人で並んで歩く。


そこかしこから、ふわりといい匂いがしている。


そういえば、もう晩ご飯の時間だ。今日のおかずはなんだろう。


そうちゃんはいつもと変わらない速さで歩いて、いつもと変わらずにわたしを送り届けて。


そして。


「佐藤さん」


玄関を開けかけたわたしを呼びとめた。


「うん?」


振り返ると、軽く頭を下げて「今日は遅くまでごめん。ありがとう、助かった」と一息に言われた。


「ううん、いいよ。大丈夫。楽しかったよ」

「そっか」


楽しかった。


ホチキスを留めるのも。じゃれ合うような掛け合いも。だからいいんだ。


少し笑って、じゃ、とそうちゃんは背を向けた。


……いつも通りの背中。

いつも通りの距離。

いつも通りの挨拶。


だからわたしはいつも通り、


「さ、とうくん……!」


——いつも通りで終わらせない。


終わらせて、たまるもんか。


固い声で呼びとめたわたしを、そうちゃんは訝しげに振り返った。


「……何?」

「佐藤くん、えっと、また明日」


いつもは言えない約束を結びたい。

明日があるって、次があるって、信じたい。


そうちゃんは瞠目して、それから、ふわりと瞳を緩め。


「また明日、佐藤さん」

「うん、また明日……!」


わたしは今日もそうちゃんの夢を見るだろう。


きっと、幸せな夢を見るだろう。