名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

「俺、どこにいた方がいい?」

「と、隣。……でいい?」

「いいよ?」


そうちゃんが笑いながら移動してくれた。


かっちこっちに固まって、おずおずと足を出す。


そんなふうに地道に進んでいると、ぶはっ、と頭上で噴き出された。


「ほんっと暗いの駄目だよな、さとーさん」

「すみませんねさとーくん!」

「すねるなすねるな」


からかうのは、少しでも気分を明るくできるように、少しでも怖さを忘れられるように、というそうちゃんの優しさだ。


暗がりがあるときに一緒にいると、怖がっても強がっても、そうちゃんは絶対そばにいてくれた。


『こわがりなみいちゃんに、おまじないをしてあげる』


しょうがないなあ、と言いながら。

ばかだなー、と笑い飛ばしながら。

おれがいるじゃん、と手を引いて。


わたしの両手をぎゅうぎゅう握りしめて、眩しいくらい能天気な笑顔で言うのだ。


『みいちゃん』

「佐藤さん」


紙束から顔をのぞかせて、そうちゃんが優しく笑う。


『おれがいる。おれがいるじゃん』

「大丈夫、俺がいる」


『だから、こわくないだろ?』

「だから、怖くない。だろ?」


つないでいないのに、手が温かい。


そうちゃんのおまじないは、いつも温かくて優しい。


効果は決まって絶大で。


「……うん。怖くない」

「ん」


今回も、その例にもれないようだった。