名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

「佐藤さん」

「やめて、佐藤さんがゲシュタルト崩壊しそうだからやめて」

「佐藤さん」

「だからやめ、」

「佐藤さん」


強引に何度も呼ぶそうちゃんに、諦めて話を聞く。


「……なに」

「俺思ったんだけど」

「……うん」


笑うなよ、とそうちゃんは前置いた。


「俺さ、お前が幼なじみでよかった」

「っ」


声が、ひどく優しくて。

微笑みが、ひどく甘やかで。


佐藤さんって呼べてないよ、と言おうとして、そんなこと言えなくて。


思わず、息をのむ。


「わたしもそ、っ、そう思う」


そっち、とか。あんた、とか。きみ、とか。


まして、佐藤くんとは呼びたくなくて。


そうちゃんと、呼びかけて。誤魔化した。


「そ。それはよかった」


パチンパチン、パチンパチン。


「佐藤さん」

「な、何」

「佐藤さん」

「だから何っ」

「んー? なんか呼びたいだけ」


さとーさん、と甘えるように笑うそうちゃんに、撃沈した。


ああもう、この、この幼なじみはほんとに……!!


「……ば、ぶぁっかなの!? あほなの!?」

「佐藤さんは、俺のこと呼んでくれないの?」

「うるさい……!」

「佐藤さん」

「……何、佐藤くん」

「赤いよ?」

「知ってます……!」


そうちゃんの、ばか。