名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

慣れからか、最近はそうちゃんと二人きりでいると意識していても、まるでなんでもないことみたいに、最早全然心臓が高まらなくなっていた。


でも今は、その心臓が通常運転をやめて、どんどんどんどん加速して、どきどきうるさく音を立てている。


嬉しいのに頭が真っ白になってしまって、何も言葉が出てこない。


そうちゃんがちらりとこちらを見遣った。


目が合うと一瞬でそらされてしまったけど、願望でなければ、その瞳に浮かんでいたのは嫌悪や諦めではなくて、羞恥心や照れのような気がした。


「…………」

「…………」


黙り込んだままだけど、先ほどとはまるで違って、寂しかったり気まずかったりしない。


むしろ、幸せな気分で。


うるさい鼓動が、静かすぎる空気を伝ってそうちゃんに聞こえてしまうんじゃないかって心配なくらい、大きく波打っている。


嬉しい。

嬉しい。


嬉しかった。


名前を呼んでくれたことが、とてもとても、嬉しかった。