名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

お互いの家が見えた頃合いで、今までつながれていた手が呆気なく離れた。


そうちゃんの大きい手を思わず追いかけそうになって、慌ててそっと握り込む。


ほてった手が涼風に冷たい。


「じゃ」

「うん。じゃあね」


また明日、が怖くて言えないのは、いつも通り。


わたしが玄関の扉を閉めてから隣の扉が開くのも、いつも通り。


ただいまあと声を張り上げるのも、いつも通り。


部屋に駆け込んで着替えをするのも、いつも通り。


だけど。


だけど。


「…………馬鹿……!」


あいた手に握りしめていたすっかり冷えたペットボトルも、いまだに残る左手の温もりも、うるさい心臓も、全然全然、いつも通りなんかじゃなくて。


ばくばく、ばくばく。


跳ねる鼓動に強く目を閉じる。


「ばか……」


これだから、そうちゃんはずるいんだ。