呼び捨ては、ある一定の親しさがあれば普通にできる。


逆に、あだ名は別だ。


機会がないと、呼び捨てがあだ名みたいなものとして定着してしまう。


『そうちゃん』という愛称は、わたし一人が呼ぶからわたしたちの愛称たり得た。


……もしそうちゃんって呼ぶのが普通になってしまったら、どうしようかと思った。


もちろんそれでもそうちゃんって呼ぶけど、特別感が欲しいから。


「美里」

「うん?」

「俺のこと呼んで」

「…………」


なんだそれ。なんだそれ。


「……そうちゃん」

「ん。やっぱこれだな」

「わたしが呼ぶのはキモくない?」

「ん。美里が呼ぶのはキモくない」

「…………」


そ、そうか。そうなのか。


ああくそうずるいな、


「てか、『そうちゃん』とか。絶対美里にしか呼ばせたくない」


そうかああああ……!


くっそうずるい、ほんとずるい、そうちゃんはずるすぎるんだよ全くもう。


そうちゃんの無意識で落とす言葉ほど、甘いものはないんだ。