放課後、いつもは来ている時間に、そうちゃんが来なかった。


うちの担任の先生は話が長いから、大抵そうちゃんの方が先に終わって廊下でわたしを待ってるんだけど、珍しい。


そうちゃんがいるか確認しに、四組に顔を出した。


「あーえっと、美里さん、だっけ? 奏汰待ち?」


わたしがそうちゃんを見つける前に、きょろきょろするわたしに気づいた男子が、声をかけてくれた。


多分この人、そうちゃんの友達だ。一緒にいるのを何度か見たことがある人だから。


「はい。そうちゃ、……佐藤奏汰いますか?」


思わず言い直して、ついで敬語にしたわたしに、その男子はゆっくり瞬きをした。


「いますよ。ちょっと待ってくださいね、呼んできます」

「すみません、ありがとうございます。お願いします」


いえいえ、とそうちゃんのところに向かった彼は、「美里さん呼んでた」とわたしを指し示しながら、何気なく聞いた。


「奏汰おまえ、ソウちゃんって呼ばれてんの?」

「ああ、まあ」


そうちゃんは鞄に教科書やらノートやらを詰めて、手を休めずに準備をしている。


頷いた途端、彼の目がいたずらっ子のように輝いた。


「じゃあ俺ソウちゃんって呼ぶ……のは違和感ありすぎて嫌だから、ソウって呼ぶわ」

「あたしソウちゃんって呼ぶ!」


彼の言葉がきっかけになったらしい。わらわらと手が上がる。