名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

朝早いからか、いつもより空気が澄んでいる気がする。


ほんとはそんなことはなくて、空気の冷たさのおかげかもしれないけど。


「おおお、新鮮」

「俺も新鮮」

「ね」

「ん」


新鮮なのは、空気の温度ばかりでは、なく。


そうちゃんが隣にいる朝は、ずいぶん久しぶりだ。


小学生の頃、一緒に登校していた頃ぶり。


そのときとは、わたしたちの身長も気持ちも違っている。


何よりわたしの好きが積もりすぎていて、揃う足音と青空に、妙な緊張を覚える。


「美里、今何時?」

「えーっとね、七時五分」

「ん。じゃあ余裕だな」

「だね」


それほど珍しくない会話にさえも、じわり、体温が上がった。


あまりに緊張しすぎている自覚はあって、恥ずかしくてそうちゃんの反対方向を向く。


それでも視界の端の隣が気になるので、道路に映る影を見てしまわないように上を見上げてみたら。


「わっ」


つまづいた。


「大丈夫?」

「あ、うん、大丈夫」

「気をつけなよ」

「はーい」


バランスを崩しただけだから、次はつまづかない。大丈夫。


そうだ、下見て歩こう、と、思ったんだけど。


「わあっ」


ぶつかりかけた。


幸い怪我をするほどではなかったけど、こう、明らかに電柱に向かって歩いてた。


「……大丈夫?」

「大丈夫大丈夫」


ものすごく心配そうなそうちゃんに苦笑いする。


「ほんとに?」


ジト目は流して知らんぷりしておくべく、素知らぬ顔で足を運べば。