名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

「美里、作り置きのキャベツスープってどこ? 冷蔵庫開けていい?」


そうちゃんは思いの外手伝うのが上手かった、なんて言ったら、失礼かもしれないけど。


ちゃんと流れを見ていて、言われたことをするのではなくて、自分から確認する。


そういう手伝いの仕方に慣れているのは、おばさんの手伝いをそういうふうにしているからに違いない。


ただいま、だけが聞こえる隣の家の夕方が、そうちゃんの日常が、少し垣間見えた気がした。


「美里? 冷蔵庫開けていい?」

「ああうん、ごめん、いいよ。冷蔵庫の真ん中の段の左端。スープ皿に入ってるから、二つ出してもらっていい?」


今日そうちゃんが来るのは、昨日の夜に、夜ご飯を食べながら言っておいた。


それで、いつもより多めにキャベツスープを作り置きしてもらったのだ。


コンビーフとキャベツをコンソメでじっくりことこと煮た、わたしのお気に入りのスープ。

あっさりして飲みやすいのがいい。


ニヤニヤしていたお母さんには、そうちゃんが訪ねて来る理由がわたしの遅刻防止だと聞いてがっくりされたけど、食材も食器も何でも好きに使ってもらってね、と許可を得ている。


「了解。温めるときは飲み物のコースでいいの」

「いいよ。六十度くらいかな。そうちゃん、オムレツのチーズってこのくらい? もっと?」

「もうちょい」

「このくらい?」

「そのくらい。サラダってどれ入れんの?」

「なんか食べたい野菜。好きなのを適当に」

「なんだそれ。じゃあレタスとトマトと」

「あ、水菜入れてね!」

「はいはい」


そんなこんなで朝食を作り。