名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

着替えの最中に、なんだかいい匂いがし始めた。


お茶……は違うか、香ばしい感じだからコーヒー? 違うかな。

え、なんだろ。


慌てて着替え、いろいろ準備もし終わってリビングに向かうと、麦茶片手に、そうちゃんがトースターでパンを焼いていた。


「二枚でいい?」

「あ、うん」


そうか、パンが焼ける匂いか。


通りで香ばしいはずだ。


お皿はまだ用意していなかったので、食器棚から大皿を二枚取り出す。


そこまでして、違和感に気づいた。


あれ。なんだろ。なんかおかしい。


いい匂いはパンなのは分かったんだけど、ええと、これは。


……そうか、わたし、そうちゃんが料理するところ見たことなかったのか。


食パンを焼くのさえ料理に数えてしまうほど、わたしは今まで、そうちゃんが食べ物を作るところを見たことがなかったんだ。


小学校、中学校の調理実習は、そうちゃんとは別の班だったし、わたしはわたしで料理が得意なわけではないから、自分の担当ぶんを仕上げるのに精一杯だったし。


そうちゃんの家にお泊まりしたことはあるけど、そのときは、わたしたちは遊んでばかりで食器を運ぶくらいしか手伝わなくて、おばさんが作ってくれていたし。


……そうかあ。

そうなのかあ。


改めて、新鮮な驚きをもってそうちゃんを見る。