名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

「小学生か。寝すぎだろ、それ」

「そんなことないよーだ」


すねて顔を背けると、ぼすん、と突然頭に手がのった。


「ななな何!?」


勢いよく振り向いたわたしに、「髪ぼさぼさだなーと思って」とかなんとか、ひどい感想を述べる。


「知ってます!」


勢いよく叫んで振り払ったのに、また手が頭の上に戻ってきて。


節の高い指先が耳までゆっくり下りて、耳をそっと避けて、先までゆっくりゆっくりすいた。


すいては離れ、すいては離れをいたずらに繰り返すものだから、なかなか髪からそうちゃんの手が離れない。


ええと、この人は何をしてるのかな。


妙に距離が近くて、ふと目が合う度にまなざしが優しくて、甘ったるい雰囲気に耐えられそうにないよ。


状況を打開すべく、口を開く。


「そうちゃん」

「んー?」


指先が触れる。


「もうご飯食べた?」

「食べてない」


するり、離れる。


「じゃあ食べてく? パンとオムレツとサラダと、作り置きのキャベツスープと何か果物の予定。おんなじのでよければ作るけど」

「食べてく」


指先が触れる。離れる。


「オムレツにチーズは?」

「いる」


指先が触れる。


「分かった。じゃあ、リビングで麦茶でも飲みつつ待っててよ。コップとかも前とおんなじとこにあるから」

「ん」


指先が、触れる。