名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

ひゅう、と喉が鳴る。息が詰まる。


そうちゃんがそんなふうに思うのも当然なくらい、そうちゃんと一緒に食べたくないとか、一人で行って、とか、勝手なことを散々言っておいて。


言っておきながら。


わたしはひどく泣きたい気分だった。


「そんなことなっ……、ある、わけないでしょ、だって……!」


わたしはそうちゃんが好きで。


好きだけど。


でも、周囲が気になるから。だから。


だから。


「じゃあ、一緒に食べよう」

「っ」


うつむいたわたしに、そうちゃんはゆっくり言った。


「美里」


静かに名前が呼ばれる。


「俺が、美里と一緒に食べたいんだ。……駄目?」


――ああ、この幼なじみは、ほんとに。これだから。


「……駄目じゃ、ないよ」


わたしの選択肢なんて、もう残されていないじゃないか。


「そっか。……よかった」


ふわりと笑ったそうちゃんに、わたしも笑って。


その手に下げられたままだったお弁当箱を、受け取った。