『じゃあ十一時に家の前で』

『うん』


家ってどっちの家か分からないから実はちょっぴり不安なんだけど、まあ大丈夫じゃないかな。

お隣なんだから、中間くらいにいたら多分大丈夫。会えないってことはないはず。


どきどきしながら次の文面を考える。


ええと、時間も待ち合わせも決めたし、あとは何か決めた方がいいことってあったかな。ない、よね。


もっと話したいけど、もうそろそろ遅い時間だし、寝た方がいいかな。

お、おやすみ、とか……送ってもいいかなあ。


送っても、いい、よね。うん。


おはようとおやすみが言いたいって本人に言っちゃったことが、恥ずかしいけど特別な思い出としてよみがえる。


いろいろ盛大に言っちゃったのは仕方ない。


カミングアウトで吹っ切れてよかったと思おう。


お、をタップしようとしたところで、通知音が鳴った。


『おやすみ、佐藤さん』


あ、そうちゃんから送ってくれた……!


「……うん」


うん。


ぎゅっと抱きしめたクッションに、こてり、顔を埋める。


……今日はいい夢が見られそうだ。


優しい夢だと、いいな。


『おやすみ、佐藤くん』


ほくほく顔で布団に潜ったところで気づいた。


まって。待って。

土曜日って明後日じゃんか。


えっと……明日は、何を話せばいいんだろう。