名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~

本当は会話しようとしたらできたのかもしれない。話題がなんだって、話しかけたら返事をくれただろう。

わたしの決心がつかなかっただけ。


……わたしはずっと、怖がりなのだ。


なんとなくそのまま、連絡先を知って一日経って、二日経って、一週間経ったと思ったら一か月経っていた。


もう完全にきっかけなんか見つけられなくて、書き始めを「こんにちは」にするか「おはよう」にするか「こんばんは」にするかで迷っているうちに、一年が過ぎてしまって。


どうしようどうしようって焦ってみたけど、やっぱりどうしようもなくて、半ば諦めて見ないようにしてきた。


それからずっと、そうちゃんの連絡先だけ、履歴が何もないままで。


全然話さないのにいきなり連絡していいのかなとか、迷惑じゃないかなとか、自分で規制をかけてきた。


……でも、本当は。本当は、ずっと。


——ああ、これ、そうちゃんに教えよう。

——これ、そうちゃんに言ったら、なんて言うかな。笑ってくれるかな。


思い描いた言葉はたくさんあった。

本当は、不安で飲み込んだ、話したいことがたくさんあった。


「土曜日の何時から、とか。どこ行こう、とか。何したい? とかそういうっ」


喉の奥に詰まった言葉に、一度、息を飲んで呼吸を整える。


「そういうの、ばっかりじゃなくて」


長い間うまく言えなかった本音をそっと、嗄れた声で呟いた。


「今何してる? とか、今日何あった? とか、帰りじゃ言い終わらなかった雑談、話したいんだよ」