もうなんなの。


この状態でどうして眠れるのよ。


私のドキドキを返して!


でも寝かせてあげよう。


一人でセリフを必死に頭にたたみこむ。


セリフと演技かどうしても伴わない。


《これは運命かもれない。》


《あなたが好きです。》


《たとえあなたが玲子さんを忘れられなくても、私はあなたを愛しています。》


涙がポロポロ溢れた。


私にはこんな恋出来ない。


愛したら愛いされたいもの。


恋愛未経験の私には高度な問題。


バイト先で告白されて嬉しかったけど、バイト仲間で彼の事を好きな子がいたから付き合う事をためらった。


本当の好きが分からなかったし。


いい加減な気持ちではいけないと、真剣に悩んだ。


だけど彼は告白された子と次の日から付き合っていた。


「綾華は何を考えてるのか、分からないよ。俺の事少しでも考えてくれた。」


そんなことないと言いたいのに。


「ごめんなさい。」


それしか言えなくて、結局そのバイトは辞めた。


その彼と付き合いだした子に、綾華がいると彼が心替わりしないか心配なの。だから、バイトを辞めてほしい。


遠回しに言われたけど、即辞めた。


恋愛なんか怖くて出来ない。


私の初恋は智尋兄なんて、言ったら絶対驚くだろうな。


田城ちひろの寝顔を見て呟いた。


《寝顔は昔と変わらないね。》


あの頃に戻りたいよ。


智尋兄が好き。


そっと、智尋兄の唇に触れてみた。