ぼくはまだ恋をしらない

午後の授業に花乃は居なくなり、それから三日間、花乃は僕の前に現れなくなった。
その間連日テレビでは花乃の事が報道され、花乃の両親や、クラスメイトや学校が映し出されていた。
僕は敢えてそれらを見る事にした。
あの女の子が、あの歳で自ら死を選んだ意味を、理由を僕は知らなくてはいけないと思った。
知っていく中で、僕は恐怖感を拭うことが出来なかった。
放送される事はイジメの内容や、花乃の死に方や死んだ場所で、イジメの内容に関しては、そんな事を毎日花乃は受けていたのかと思った。
イジメのドラマとかである様な事が現実にあるんだと思った。
給食にはゴミや虫を入れられていたとか、牛乳を頭からかけられていたとか、トイレでは上から水をかけられていたとか…見ていたクラスメイトの証言は違和感を覚えた。
何故見ていたのならば、誰も声をあげなかったんだ?
花乃を助けようと声をあげなかったんだ?
子供がこんなイジメをしてしまうのなら、それを止める勇気はなかったんだろうか?
僕は知れば知るほど辛く悲しかった。
しずくが泣きそうに僕に言った顔がよぎる。
他人に興味の持たない僕でも、これは堪える。
やっぱりイジメが原因だったのだろうか?
報道ではイジメは3年生頃から始まっていたと言っていた。
そんなに耐えてきたの、何故今になって自殺をしたんだ?
耐えきれなくなった?
それとも何か引き金になる事があったのか?
どんな理由にしても、本人に聞くのが一番なんだけど花乃は何処に行ったんだ?!
ドアをノックする音がした。
「はい?」
「私…。」
「しずく?」
僕はパソコンを閉じた。
「どうぞ。」
入って来た、しずくはあの日から塞ぎ込んでいる。
自分のせいで花乃は居なくなったのだと思っていた。
「花乃ちゃんは?」
「ううん。まだ。でも、しずくのせいじゃないって言ったろ?!」
「うん、そうだけど…。」
「きっと、家族のところに居るんだと思う。まだ幼いし家族のところに居るのは、よくある事なんだ。」
「また、椋のところに来るかな?」
「うん。来る。行くところなんてないんだから。」
「わかった。帰って来たら教えて…でも、花乃ちゃんが言わない限り私は関わらない方がいいかなって思ってる。なんだか辛くて。」
「うん。わかった。」
しずくは「また、明日」と言って帰って行った。

夜になり晩御飯を食べ、シャワーを終えた椋がタオルで頭を雑に拭きながら二階に上がった。
階段の一番上に花乃が座り待っていた。
「花乃、いつから来てた?」
「さっき。」
「何処に行ってたの?」
「お母さんのとこ。」
椋は部屋に入りベッドに座った。
花乃は椅子に座るとクルクル回って遊んだ。
「そっか…しずくが心配してたよ。」
「うん。」
「急に居なくなったから、自分のせいで居なくなったんじゃないかって…。」
「しずくちゃんのせいじゃないよ。」
「そっか、ならよかった。」
「お兄ちゃんは、しずくちゃんが好きなの?」
「うん。好きだよ。同じ歳の妹みたいな感じかな。僕にとっては、しずくが兄弟だね。」
「……花乃のお姉ちゃんは花乃が嫌いなの。」
そう言った花乃は姉を憎んでる様に思えた。
「真乃ちゃん?」
驚いた表情で僕見た。
「うん。真乃ちゃんは花乃が嫌いだった。仲良かったんだけどな…。」
目に溜まって行く涙が流れない様に頑張っていた。
花乃は涙を流したくないみたいだった。
「どうして、そう思うの?」
「だって、死ねばいいのにって言ったんだもん!!」
花乃は立ち上がり大声で叫んだ。
「お姉ちゃんが花乃に言ったの?」
「…うん。アンタなんか死ねばって。だから花乃、みんなが居ない時に首を吊ったの!!」
引き金は姉の言葉??
「花乃…落ち着いて話して。じゃ花乃は何が気になってるの?」
椋はベッドから離れて花乃のそばに行くと花乃の手を握った。
「花乃に死ねばいいって言った、真乃ちゃんが気になって…でも、泣いてもいなかった。花乃が死んでも真乃ちゃんは泣いてなんかなかった!!」
「会いに行ったのは、お母さんじゃなくて、真乃ちゃんに…だったんだんね?」
「うん。真乃ちゃんは花乃が死んでも死ななくても、どっちでもいいんだよ。」
そう言ったとたん、頑張っていた涙は流れていった。
「花乃。ちゃんと確かめよう。」
「もういい。」
「いや、ちっとも良くない!このままじゃ花乃はずっとこのまま幽霊で彷徨うことになるんだ。そんな事しちゃいけない。花乃の為にちゃんと確かめよう。僕は花乃が死んで平気なお姉ちゃんじゃないと思うんだ。」
「なんでお兄ちゃんひわかるの!?」
「じゃお兄ちゃんの為に確かめて欲しい。花乃が正しいのか、僕が正しいのか確かめよう!!」
花乃は黙って頷いた。