30分程すると、病院に着いた。
車を降りるとおじさんとおばさんは一目散に走り出した。
椋も後を追うように走った。
病室の前で椋は足を止めた。
これから先に行きたくなかった。
死んでるのはわかってる。
けれど、それを自分の目で見る事は抵抗がある。
身近な人間が死ぬと、こんなにも心が揺さぶられるんだと思った。
足元から冷たい風が吹いてる様な感覚に襲われる。
自分と母親を残して勝手に死んだ父親の時とは違う。
もう一度目を閉じると頭の中にあの日の事を思い出す。
一度も忘れた事などなかった。
あの日もこうやって僕は病室の前で待っていた。
何度も何度も母親を酒で酔っては殴っていた父親が死んだと警察からの電話で、母親は当時小学2年生だった僕を連れて病院に行った。
母親は病室の前に僕を待たせて室内に入った。
ドア越しに母親の泣く声が聞こえた。
あの頃から僕のこの力はあらゆるモノを見せて来た。
けれど、自殺したはずの父親は僕の前には現れる事は今になっても、ない。
ドア越しにおばさんが泣いてるのがわかる。
「椋!!」
声の方を見ると母親が走って来るのが見えた。
「母さん…。」
椋は膝から崩れ落ちた。
「椋っ!!」
母親に支えられる僕の体は自分の体じゃないみたいに力が入らない。
「しっかりしなさいっ!!」
「しずく…。」
椋は流れ出る涙の意味がわからなかった。
父親と交差してるのか、しずくが自殺を選んだ事がショックなのか、自殺を選んでしまう理由に気付いてやれなかった自分への後悔なのか…。
色んな感情が一気に押し寄せ中学生の子供には抱えれなくなっていた。
椋は母親の腕の中で、そのまま意識を失った。
目が覚めた時は真夜中になっていた。
ベットの傍に母親が居た。
椅子に座りベットに寄りかかり眠っている。
椋は母親を起こさない様にベットから出た。
「椋…。」
カーテンの向こう側から、しずくの声がした。
椋はカーテンを開けようとしたが、しずくがそれを制した。
「待って…そのままで聞いて。」
椋はカーテンを掴んだ手を離した。
「まず…ごめんね。びっくりさせたよね。」
「うん。」
「私ね、ずっとイジメられていたの。」
知らなかった事実に花乃の時の、しずくを思い出した。
あの時の言葉や行動は、花乃と自分を重ね合わせてたんだろうかと思った。
「中学になってから、他の小学校の子達にイジメられ始めたんだけど、いつの間にか小学からの友達もあっち側に行っちゃって…私ずっと一人だった。」
「ごめん…気付いてやれなかった。」
「しかたがないよ…ずっと別のクラスだったもん…。」
「でも…。」
「それに、椋には知られたくなかったから…夏休み終わって、もう少しの辛抱だって思ってた。卒業したら、終わるって…でも、昨日一人の子が言ったの…高校に行っても仲良くしようねって。それ聞いたら、もういいやって思って…。」
「それで、死んだの?」
「うん…最期に椋に会いたかった。そう思ったら、椋の部屋に居たの。自分でもびっくりしちゃった。」
「びっくりしちゃったじゃないだろ!!」
椋は思いっきりカーテンを引いた。
そこには泣き顔でグチャグチャな、しずくが居た。
「開けないでって言ったのに!」
そう言って、しずくは椋に背中を見せた。
椋は迷わず後ろから、しずくを抱きしめた。
「椋…私ずっと椋が好きだった。ずっとずっとずっと好きだった。」
抱きしめた腕にポタポタと、しずくの涙が落ちていく。
「椋…ごめんね。ごめん。」
「許さない!なんで、一人だと思ったんだよ!お前にはおじさもおばさんも…僕だっていたのに!!」
「…椋……。」
どれだけ力を込めて抱きしめても温かくない しずくの体が椋を心を締め付けた。
「椋…起きたの?」
目を擦りながら母親が体を起こした。
「うん…。」
母親を見た少しの間に、しずくの姿は消えていた。
車を降りるとおじさんとおばさんは一目散に走り出した。
椋も後を追うように走った。
病室の前で椋は足を止めた。
これから先に行きたくなかった。
死んでるのはわかってる。
けれど、それを自分の目で見る事は抵抗がある。
身近な人間が死ぬと、こんなにも心が揺さぶられるんだと思った。
足元から冷たい風が吹いてる様な感覚に襲われる。
自分と母親を残して勝手に死んだ父親の時とは違う。
もう一度目を閉じると頭の中にあの日の事を思い出す。
一度も忘れた事などなかった。
あの日もこうやって僕は病室の前で待っていた。
何度も何度も母親を酒で酔っては殴っていた父親が死んだと警察からの電話で、母親は当時小学2年生だった僕を連れて病院に行った。
母親は病室の前に僕を待たせて室内に入った。
ドア越しに母親の泣く声が聞こえた。
あの頃から僕のこの力はあらゆるモノを見せて来た。
けれど、自殺したはずの父親は僕の前には現れる事は今になっても、ない。
ドア越しにおばさんが泣いてるのがわかる。
「椋!!」
声の方を見ると母親が走って来るのが見えた。
「母さん…。」
椋は膝から崩れ落ちた。
「椋っ!!」
母親に支えられる僕の体は自分の体じゃないみたいに力が入らない。
「しっかりしなさいっ!!」
「しずく…。」
椋は流れ出る涙の意味がわからなかった。
父親と交差してるのか、しずくが自殺を選んだ事がショックなのか、自殺を選んでしまう理由に気付いてやれなかった自分への後悔なのか…。
色んな感情が一気に押し寄せ中学生の子供には抱えれなくなっていた。
椋は母親の腕の中で、そのまま意識を失った。
目が覚めた時は真夜中になっていた。
ベットの傍に母親が居た。
椅子に座りベットに寄りかかり眠っている。
椋は母親を起こさない様にベットから出た。
「椋…。」
カーテンの向こう側から、しずくの声がした。
椋はカーテンを開けようとしたが、しずくがそれを制した。
「待って…そのままで聞いて。」
椋はカーテンを掴んだ手を離した。
「まず…ごめんね。びっくりさせたよね。」
「うん。」
「私ね、ずっとイジメられていたの。」
知らなかった事実に花乃の時の、しずくを思い出した。
あの時の言葉や行動は、花乃と自分を重ね合わせてたんだろうかと思った。
「中学になってから、他の小学校の子達にイジメられ始めたんだけど、いつの間にか小学からの友達もあっち側に行っちゃって…私ずっと一人だった。」
「ごめん…気付いてやれなかった。」
「しかたがないよ…ずっと別のクラスだったもん…。」
「でも…。」
「それに、椋には知られたくなかったから…夏休み終わって、もう少しの辛抱だって思ってた。卒業したら、終わるって…でも、昨日一人の子が言ったの…高校に行っても仲良くしようねって。それ聞いたら、もういいやって思って…。」
「それで、死んだの?」
「うん…最期に椋に会いたかった。そう思ったら、椋の部屋に居たの。自分でもびっくりしちゃった。」
「びっくりしちゃったじゃないだろ!!」
椋は思いっきりカーテンを引いた。
そこには泣き顔でグチャグチャな、しずくが居た。
「開けないでって言ったのに!」
そう言って、しずくは椋に背中を見せた。
椋は迷わず後ろから、しずくを抱きしめた。
「椋…私ずっと椋が好きだった。ずっとずっとずっと好きだった。」
抱きしめた腕にポタポタと、しずくの涙が落ちていく。
「椋…ごめんね。ごめん。」
「許さない!なんで、一人だと思ったんだよ!お前にはおじさもおばさんも…僕だっていたのに!!」
「…椋……。」
どれだけ力を込めて抱きしめても温かくない しずくの体が椋を心を締め付けた。
「椋…起きたの?」
目を擦りながら母親が体を起こした。
「うん…。」
母親を見た少しの間に、しずくの姿は消えていた。


