颯は頭をかきながら「まぁ別に迷惑ではないけど……」と、返事をする。


「やった! ありがとう颯!」


あたしはそう言い、颯に抱きついた。


廊下に出ていた数人の先輩たちが冷やかしてくるけれど、そんなことおかまいなしだ。


「でも、どうして急にそんな事言いだすんだよ?」


「颯が好きだから」


単刀直入にそう言うと、颯は耳まで真っ赤になってしまった。


その反応にあたしは満足する。


あたしが考えたのはこうだった。


休み時間の度に颯に会いに来て、希彩ちゃんの事を考える隙を与えない事。


それと同時にあたしが彼女であることを、周囲に見せつけるのだ。


うまく行けば颯はシスコンから卒業できるし、カメラに写っていたような女からの虫よけにもなる。


一石二鳥だ。


自分の友達との時間は減ってしまうけれど、今は颯の事が最優先だ。


それからあたしは、ホームルームが始まるまでの時間を颯と一緒に過ごしたのだった。