「今度その人の写真を見せてよ」


あたしがそう言うと、杏里は「写真なんて持ってないよ」と、眉を下げて言った。


「持ってなくても、好きな人を隠し撮りしたりとか、するでしょ?」


「隠し撮りなんて! そんなこと絶対にしない!!」


杏里はそう言い、強く首を振った。


「そうなんだ? でも、人気のある先輩の写真とかみんな撮ってるよ?」


「そうかもしれないけれど、本人に許可なく撮影するなんて、ダメだよ」


「好きな人をずっと見ていたいとか、思わない?」


「思うけど……本人が傷つくかもしれないことはできないよ」


杏里の言葉にあたしの胸は一瞬痛んだ。


本人が傷つくかもしれないこと……。


確かにその通りだ。


盗撮はもちろん、監視カメラを勝手にしかけられたら誰だって傷つく。


下手をすれば犯罪にもつながる行為だ。


「どうかしたの?」


黙り込んでしまったあたしに、杏里が聞く。


「ううん、なんでもない」


あたしはそう返事をしたのだった。