「どうすればいいんだろう……」


杏里は机に突っ伏してしまった。


初めて人を好きになったから、不安が膨れ上がっているのだろう。


あたしはそんな杏里の頭を撫でた。


「大丈夫だよ杏里。彼女だって決まったわけでもないし、お礼だってまだなんでしょう? お礼くらいしとかなきゃ、印象が悪くなっちゃうよ?」


「そうだよね……。実は昨日はお礼のお菓子を買いに行ってたの」


「そうだったんだ」


頭の中が相手の事で一杯になった時、その相手が女の人を一緒に目の前に現れた。


そう考えると、杏里のショックがよくわかる。


「お菓子は買えた?」


「うん……」


「それなら、渡しに行かなきゃもったいないよ?」


そう言うと、杏里はゆっくりと顔を上げた。


さっきよりも少しスッキリしたような顔をしている。


「ついていこうか?」


そう聞くと、杏里は「ううん、大丈夫」と、答えた。


「あたし、今日の放課後行ってみる」


「そっか。頑張ってね」


杏里がちゃんとお礼を渡せるかどうか少し心配だったけれど、あたしは早く帰って監視カメラを確認しよう。


そう思ったのだった。