颯ばかりを見ていて、自分が希彩ちゃんに似ているだなんて考えた事もなかった。


「颯は、あたしが希彩ちゃんに似ているから付き合っていたんだね……」


そう呟くと、虚しさがこみあげてくる。


颯が見ているのは、元々希彩ちゃん1人だけだった。


あたしのことなんて、全然見てくれていなかったんだ……!!


あたしは、こんなにも好きなのに!


そう思うと、衝動的に拳を振り上げていた。


「あぁぁぁぁ!!!!」


大きな悲鳴を上げ、その拳を鏡に振りおろす。


ガシャン!


と音が響いて割れた鏡がバラバラと床へ落ちて行く。


鏡を殴り付けた拳には破片が突き刺さり、ドクドクと血が流れはじめる。


あたしはそのまま風呂場へと向かい、そこにあった全身鏡を殴り付けた。


何度も何度も、血まみれになった手で鏡を割る。


数えきれないくらいの破片が拳に突き刺さり、腕まで真っ赤に血にそまりながら、あたしは鏡が自分をうつさなくなるまで、殴りつけたのだった……。