抵抗する気力も、逃げる気力もなくなって、あたしは座りこんだままそう言った。


「俺は君を殺しはしない」


「なんで!?」


ここから出るくらいなら、いっそ殺してくれた方がマシだ。


家族も颯も友達も、なにもかも失った世界になんて、戻りたくない!


そう思うのに、叶さんはあたしを置いて部屋のドアへと近づいて行く。


「待って……!」


「そうだ、1ついい事を教えてやるよ」


ドアから出る寸前、叶さんは振り返ってそう言った。


「お前さ、自分じゃ気が付いてないだろうけど……希彩ちゃんにそっくりな顔してるよ」


それだけ言うと、叶さんは部屋を出たのだった……。