しかし、いつまで待っても首に痛みは訪れなかった。


ガンッ!


という大きな音が聞こえ、ハッと目を開けると目の前に白目をむいたお兄ちゃんがいた。


驚き、目を丸くしているあたしの前で、お兄ちゃんの体はグラリと倒れてしまったのだ。


そしてその向こうに見えたのは……大きな壺を持った叶さんだ。


叶さんは肩で呼吸を繰り返し、壺を置くと「大丈夫か?」と、駆け寄って来た。


口のガムテープを外されると、あたしは大きく息を吸い込んだ。


どうして叶さんがここに?


そう聞きたいのに、声にならない。


安心感に包まれた瞬間、涙がボロボロと流れ出して止まらなくなっていた。


「早く、ここから出よう」


手足を解放されたあたしは、叶さんに支えられながらなんとか部屋を出た。


その瞬間「えっ……」と、唖然として周囲を見回してしまった。


部屋の外に広がっていた光景は、とてつもない広い大豪邸だったのだから。


目が覚めた時には部屋の中にいたからわからなかった。


赤い絨毯が引かれた廊下に、廊下のあちこちに置かれている装飾品。