目の前のあたしを見て呼吸は荒くなり、口の端からダラリとよだれを垂らしているお兄ちゃん。


今まで見た事のない狂気の満ちたその顔に、背筋がゾクゾクと寒くなる。


「純白……」


お兄ちゃんの手があたしの頬を撫でる。


その冷たさにビクンッと体が跳ねた。


ナイフを目の前にかざされ、その刃におびえて泣いている自分の顔が映っていた。


「あの世で一緒になろう。な?」


耳元で囁き、あたしの耳を舌で撫で上げる。


その気持ち悪さにあたしはジタバタともがいた。


しかし身の虫状態ではお兄ちゃんから逃げることまではできない。


動いた事であたしの体は横倒しに倒れてしまっただけだった。


お兄ちゃんが馬乗りになり、あたしの首にナイフの刃を這わせる。


その目は何かに酔っているようにうつろで、恍惚とした表情だ。


あたしは必死で刃から逃れようとするが、強く押し当てられてそこから離れる事はない。


殺される……。


叫ぶ事も逃げる事もできなくて、あたしは強く目を閉じた……。