冷静にそう考えながら、あたしはジッと叶さんを見つめる。


叶さんには殺す以外の別の目的があるんじゃないか。


そんな気がしている。


その時だった。


叶さんがマスクに手をかけたのだ。


その動作にあたしは目を見開く。


「できれば、恐怖で怯えているだけにしてほしかった」


男の声に、あたしは唖然とした。


その声。


十分に聞き覚えがある。


それにさっき感じたあの香りは……。


男がマスクを完全に外し、あたしの心臓は飛び跳ねた。


そこに立っていたのは叶さんではなく……お兄ちゃん、だったんだから……。