そう思うと同時に、あたしの視線はクローゼットへと向けられていた。


あの中に、杏里がいるかもしれない。


そう思うと恐怖よりも助けたいと言う気持ちの方が先立った。


あたしはベッドから下りてクローゼットの前で立ち止まる。


心臓は破裂してしまいそうなほど早く打っている。


できればこのまま部屋を飛び出して逃げ出してしまいたい。


いや、そうするのが一番懸命だと思う。


だけど、ここに杏里がいるかもしれないと思うと、ほっておくことなんてできなかった。


あたしの、大切な親友……。


あたしはクローゼットに手をかけ、ギュッと目を閉じた。


あぁ……神様……どうか助けてください。


人間、こんな状況になると信じてもいない神様を頼ってしまうものなんだと、あたしは少しだけおかしくなった。


そして、手に力を籠めてクローゼットを開いた……。